大橋巨泉のショートエッセイ - 巨泉の本物を見る

ロートレックの淋しさに触れる

昨年はお休みでしたが、今年(2013年)は恒例の5月のヨーロッパ旅行に出かけました。前半をフランス、後半はイタリアが中心でした。フランスはパリ在住の友人、木部春樹夫妻と4人連れです。このご夫婦のお蔭で、フランスの田舎はほとんど廻ったが、いつも楽しい。今回はTGV(新幹線)でボルドーまで行き、そこでレンタカーをしました。

名門ワイナリー、シャトー・オーブリオンを訪れ、サンテミリオン村に一泊してから、進路を南に取る。南仏というとコートダジュールやプロヴァンスを思うでしょうが、この南西部は又独特の文化があります。世界遺産のロカマドールの奇観を楽しんだあと、中世の町サルラに1泊。ここは何とフォワグラ(ボクの大好物!)の産地で、道端にガチョウがうようよしています。そしてフォワグラの安いこと! しばらくはコレステロールのことは忘れました。

そして翌日待望のアルビに向かう途中、モントバンという町に立ち寄りました。ここにはアングルの「ルイ13世の誓い」がある筈です。まっすぐに美術館に向かいましたがありません。聞いてみると近所の大聖堂にあるということでした。(何と拙書『誰も知らなかった絵画の見かた』にそう書いてあるのに!?)。アングルとしては大変古典的作品ですが、その絵の巧さとラファエルへの尊崇がよく表れています。

アルビは当然ロートレック美術館です。ここは初めてで、どうしても行きたかった所です。作品は特別展などでほとんど見ていましたが、改めて彼の天才ぶりに触れました。年代順に見て行って、晩年の「帽子屋の女」の前に立つと、ロートレックの淋しさが伝わってくるようでした。不便な所ですが、あの辺に行ったら是非寄ってみてください。

最後は大好きなモンペリエに2泊。当然ファーブ美術館で、バジールの絵をたっぷり見ましたが、3年前より充実していました。この辺のワインは、ラングドック・ワインといって、シラーが主の荒っぽいワインです。

イタリアは、もう見納めと思い、ウフィッツィ、パラティーナの二大美術館をじっくり歩き、カルミネ教会でマザッチョにお別れを告げて来ました。そしてシエナに足を延ばし、「世界一の広場」に感動しました。ベネツィアでは、12年前に工事中で入れなかったレコニッツォ宮殿に入れました。有名作家のものはありませんが、当時の貴族が画家に画かせた画には、エロもありグロもあり、これで客をもてなしたんだなと感じた次第です。

大橋巨泉

大橋巨泉プロフィール
本名・大橋克巳。早稲田大学政治経済学部新聞学科中退。ジャズ評論家、テレビ構成作家を経て、テレビタレントに転身。『11PM』、『クイズダービー』、『世界まるごとHOWマッチ』などヒット番組を数多く手がけた。1990年。セミリタイヤを宣言し、日本、カナダ、ニュージーランドなどに家を持ち、季節ごとに住み分ける「ひまわり生活」を送る。主な著作に、『巨泉―人生の選択』、『パリ・マドリード二都物語 名画とグルメとワインの旅』、『巨泉流 成功!海外ステイ術』(講談社)、大橋巨泉の美術鑑賞ノート1『大橋巨泉の超シロウト的美術鑑賞ノート』、同2『目からウロコの絵画の見かた』、同3『誰も知らなかった絵画の見かた』、同4『印象派 こんな見かたがあったのか』(ダイヤモンド社)などがある。

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